Vol.18  ハチ女を犯した男    written by 珍 ~CHIN~

多分この話を聞いても、信じてくれる人は誰もいないと思う。

これまでに3人の友人に話してみたが、一笑されるのがオチだった。

だから、俺はもうその話を誰かに語ることはしない、と決意した。

かくいう俺ですら、今ではこの話は「夢物語」として自分の中で整理をつけた。

それを真実と認め続けることは、この大きな宇宙のシステムの中で、

自分の存在そのものが抹消されるようでとてもじゃないが受け入れられないのだ。


しかし、こうして、読み物として、フィクションとして認識してもらう分には問題ないのだ。

仮に自分が第三者の立場でこの話を聞いたとしても、真実として受け入れられない。

それほどの異様な話なのである。



あれは7年前の夏のことだった。

俺は勤めている会社からの帰り道、パチンコ屋に入って少しだけ遊んでいくつもりだった。

パチ屋で当時人気だった「仮面ライダー」にハマっていた。

絵柄も当時のレトロな雰囲気を忠実に再現し、主人公の本郷武が変身するシーンやショッカーのアジトで改造人間手術を
受けるリーチなど、多彩な演出が俺らの世代のハートど真ん中に直撃したヒット台であった。

とりわけ魅了されたのがライダーベルトが回転する予告で、
この時のベルトの発色と強烈なサウンドは俺のみならず、多くの人が脳をコントロールされたに違いない。


まるで麻薬のような音だった。


その日も、残り少ない小遣いを財布に、いつものパチ屋へと入った。


ライダーの台はこの時間になってもなかなか空きが出ないのだが、シマの端の方の1台のみ空いていた。

俺は、すぐさま台の玉受け皿にタバコを投げ置くと、どっかと椅子に座り、財布から千円札を1枚取り出した。

最初に1,000円だけ打ち、回転数を見る。(玉がチャッカーに入賞する1000円あたりの回数)

やがて玉はなくなりそうになる。

ここまでで約16回転。

まずまずだ。


最後の玉を打ち終えて、いよいよ本格的に打ち込めるよう、財布を取り出す。

すると、台がいつもと違う異音を発し出した。


「?…なんだ?」


台のモニター内に黄色とオレンジの特撮タッチの爆発模様が連続で明滅している。

おおおぉおお? プレミアか!?

明滅はいっこうに消えることなく、どんどんと派手にでかくなってくる。

それと同時に俺の心臓の鼓動は期待へと高まる。

もう間違いない。

プレミアの鉄板演出だろう。

V3が出てくるのか?ライダー全員が出てくるのか?

ワクワクしながら煙草に火をつけ、事の成り行きを見守った。


しかし、もう1分近くになるが、爆発模様の明滅が画面に入り切らなくなるほどに肥大していくばかりで一向に次の演出が始まらない。

これはおかしい。

台の故障か何かか?

少し不安になりつつも、様子を見守る。

と、いきなり役物のライダーベルトが例の強烈な音を出し始めた。


ブォォォォォ~ン ピキィィィィーーーーーン!!!


きたか!!

さっそく脳内にアドレナリンが噴き出す。


と、その時に得も言われぬ頭痛に襲われた。

俺はあまりのその激痛に両手で頭を抱え、その場で崩れ落ちるように椅子から尻もちをついた。


その瞬間、


フッ


と目の前が真っ暗になった。



次の瞬間、気が付くと、周りの光景が一変していた。

どこかの草むらの中にいる。


なんだ?

何が起こったんだ?

ここはどこだ?


確かパチを打っていて…


俺は混乱に陥った。

全く見覚えの無いだだっぴろい草むらにひとり、うずくまっていたのだ。

ひとりパニックになっているとすぐ近くから声がした。


「第13シーン-4 テイク2、キュー!」


その声の直後、バイクの轟音がして、俺の目の前をバイクがジャンプして横切った。

「うわっ」

俺はあわてて寝ころびながらよけた。


なんだ?

何が起こったのだ?

バイクは轟音をたてて俺の左前方をつっきっていく。

後ろからその姿を見た。

運転している人間は、何やら見覚えのある服をつけている。


深い緑色。

ヘルメットのようなものを被っているが、これまた見覚えのある姿だ。

首には赤い布が風になびいている。


仮面ライダーだ。


しかし、なぜこんな田舎町に?

なぜいまどき?


そうか、もしかするとK楽(仮面ライダーのパチンコを作っているメーカー)のCM撮影現場?

…いや、というかそもそも、俺は何故ここにいるんだ???


訳が分からず、とにかくその周辺を歩き回る。

と、自分の右手の30m程先に、何やら農家の小屋のような古い建物がある。

その建物まで行き、扉らしきものをそっと開けてみる。


「きゃっ 誰!?」


俺は中を覗いてびっくりした。


ひっ!ば、化け物がいる!


その派手で毒々しい色合いの姿に一瞬、度肝を抜かれたが、

落ち着いてよく見ると、これまた見慣れたビジュアルだった。

目にはマスクをし、その上から赤く長い一対の触角が伸びている。

頭部にはパープルがかった長い毛のヅラ、全身目の覚めるようなブルーのコスチュームで
両胸にはそれぞれ、乳首の部分を中心に黄色と黒の鮮やかなコントラストの同心円が広がっている。

その姿は特に最近馴染みのあるものだった。

そう、パチの仮面ライダーのリーチでお馴染みの「ハチ女」だ。


この「ハチ女」とは、仮面ライダーに出てくる怪人で、スタイルの良い女がハチの被りものをしている。

見た目はちょっと不気味で怖い印象だが、体のラインはかなりくっきりとオンナのラインを強調するようなエロティックな衣装だ。


「まだ着替え中なんだから!誰も入ってくるなってマネージャーにもあれほど言っといたのに!」


ハチ女は衣装を半分つけた状態だった。

つまり、下半身のみ何もつけていない。

パンティ1枚のみだった。

こんなエロいハチ女を俺は初めて見た。


俺はあわてて

「あっ す、すみません、こ、ここは一体どこなんですか!?」

と聞くがハチ女も若干パニックになっていて

「イヤっ 早く出て行って!」

と周囲にある小物をこちらに向かって投げつけてくる。


俺はそれをよけながらも(よけきれずかなりあちこちに当たったがほとんど痛くない)それどころではない。

とにかくこの事態の真意を知るべく、目の前にいるハチ女と話をするのが最優先に思えた。

物を当てられながらも無理やり近づいていく。


「きゃ~!!やめてっ 近寄らないでよっ」


ついにハチ女の両手を捕まえて、動きを封じる。


「イヤっ あんた誰なの!? 関係者じゃないでしょっ」


俺はハチ女をきっと睨み、「関係者じゃない。でも、頼む、どうしても聞きたいことがあるんだ」

と凄んだ。


ハチ女は息を切らせながらも、パンツ1枚で抵抗しながら

「何を言ってるの?ここはアンタみたいな人は入れないんだよ!」

と仮面ごしに返してくる。


そんなもみ合いをしているうちに、ハチ女を強く押し続けて、ハチ女の後ろにある大きな机のようなものの上にハチ女ごと倒れてしまう。


「あっ」


ハチ女は脚を開き、机の上に倒れる。

俺も一緒にハチ女の開いた脚の間に挟まれるように倒れ込む。

机の上でハチ女の顔と俺の顔が数センチのところまで近づく。


ハチ女の息が抵抗で荒くなっている。

俺も息が上がっていた。

とにかく、今、この事態の真相を知りたくて焦ってはいるのだが
突然起こったそのシチュエーションに、俺の「男」が反応し始めていた。

ジーンズ越しにチンポがハチ女のパンティの部分に当たっている。

ハチ女の抵抗による息遣いに半分感違いした俺の性。


勃起し始めていた。


「ちょっと!やめてよ!はやくどいてよ!」

ハチ女は抵抗を続ける。

良く見るとこの女、マジでグラマーだ。


しかし、不思議だ。何か、普通の女とは違う。

妙な違和感がある。

そういう格好をしているのだから「普通」な訳はないのだが、

外見云々を通り越した何か妙な違和感…

なんだろう、この、言葉に表せない異質な感覚…??


しかし、俺はその時、そんなに冷静ではいられなかった。

もとより摩訶不思議なシチュエーションに放り込まれ、

こうして密室で妙にグラマーなパンツ1枚の女と密着している。


こんな時でもとりあえず下半身の感情が優先されてしまうのが男の性(さが)だ。

俺はここ数年、彼女がいなかったこともあり、このハチ女とのドタバタの中、

忘れかけていた性欲が一気に体に湧きあがってくるのを抑えることができなかった。


片手でハチ女を押さえつけ、片手で自分のジーンズを脱ぎ始めた。

尻のあたりまでジーンズをおろすと、次にはパンツを下した。

勃起しまくったチンポがバネのようにビヨン!と飛び出した。

ハチ女はその様子に気が付き、声を上げようとした。

これ以上ハチ女に騒がれたくなかったので、チンポを出して自由になったもう一方の手で女の口を強く塞いだ。


心臓がどきどきしていた。

怒り狂ったチンポがハチ女のパンツに押しつけられる。


「んぐぐぅう!」


ハチ女がなにやら呻きあげるが、もう片方の手でハチ女のパンツをずらし始める。


「んんんん!」


必死の抵抗をしてくるが、こんなときでも男の力が強い。

パンツを脱がそうと無理やりあらぬ方向に強烈な勢いで引っ張ったため、パンツが破れる。

今やハチ女は、奇怪なハチのマスクをかぶり、エロティックでぴちっとしたボディスーツ、そして下半身はスッポンポンであった。

その肢体を見て、俺はさらに興奮した。


自分の唾液をたっぷりと片手に吐き、その手をハチ女のオマンコになすりつける。

「んぐぐぐっ」

拒否感たっぷりの声を出しながらも抵抗できないハチ女に、サディスティックな性欲がより引き出される。

俺の唾液でぬるぬるになったハチ女のおまんこに俺のチンポをあてがった。

ゆっくりと腰を入れる。


ぬるっ


とチンポが吸い込まれる。

とてつもない快感だ。


「ぐぬん!」


ハチ女も先ほどとは何か異質な声を出した。

少し鼻にかかったハスキーな声に、余計に興奮した。

ゆっくりと腰を動かす。


「ンンンンンン!」


ハチ女も感じている!メスの声になっている!

しかし、この女、見た目のボディラインを裏切らない程の締り具合の良さだ。

こんなにオマンコの締りの良い女とセックスしたのは初めてだ。

俺は腰をストロークさせ、いつもよりずっと早くイキそうになった。


「あっ あっ い、イクっ くっ!」


ハチ女は慌てた様子で


「むぐん!んんぐぐ!」


と、俺の手に塞がれた口で必死に首を左右に振る。

しかし俺は自らの性欲の暴走を止めることなどできなかった。

一気にハチ女の膣の奥底に向かって子種をまき散らした。

その瞬間に、膣が痙攣し、先程よりさらにチンポを締めつけてくる。

物凄い快感だった。

膣が生き物のように痙攣し、チンポをぎゅうぎゅうと締めつけながら吸い込んでいく感じ。

その耐えがたい快感に、俺の射精したばかりのチンポは再び性欲を取り戻した。

こんな経験は初めてだ。

いかに中出しで気持ち良くとも、膣内で「抜かず」の2回戦などしたことなどこれまでにもなかった。

性欲が復活したかと思うと、ハチ女の膣の中の熱い温度と今や自ら腰を振り始めるその悩ましい動きであっという間に次の射精感が訪れる。


「アン アン!いい!もっと!」


もはや俺の手はハチ女の口から離れ、ハチ女は完全にセックスの快感に溺れ始めている。


「ああああっ また… イクっ!」


ほとんど立て続けに射精が始まる。

なんという締りの良さだろう。

この女、一体何者なんだ?

水蜜糖のようなオマンコの中でありったけの精子を放出し終えると、ぐったりとしてしまった。


しばらくそのままにしているとハチ女がそっと呟いた。

「あんた、凄いね… 立て続けに2回だよ。強いんだね…」

マスク越しにそう言うハチ女は、結構な大人のオンナにも見えた。

いったい何歳だろう?


俺はハチ女の年が気になり

「今いくつなの?」

と聞いてみた。


「フフ…ばかね。女にトシなんて聞くもんじゃないよ」

会話の仕方に妙な違和感がある。

しゃべり方? 何か時代ズレしたその口調…

しかし、どう見ても外見は20代…??


しかし、最近の20代の女子口調とはとても思えない。

マスクを取ろうとしたが女はそれを拒否する。


「ダメ。ダメだってば。アンタとこんなことして、顔なんか見せれないよ。一応芸能事務所に所属してるんだから」


「じゃ、せめて年だけでも… あっそうだ、何年生まれなの?」

「アンタよか若いかもね」

「だから何年生まれなの」

「アンタは?」


俺は自分の生年月日を伝えた。

1968年8月11日。


ハチ女はそれを聞いて笑いだした。

「アハハハッ、ちょっとやめてよ、アンタ七五三?」


「…?」


俺はハチ女の言葉の意味が全く解らなかった。


「なに七五三って?」

「だから今年で3歳な訳ないだろうに」


女はけらけらと笑っている。


何を言っているんだこの女は?

サッパリ意味がわからない。

何で俺が3歳に見えるんだ…?



!!!!!


突然、俺は雷に打たれたような衝撃が体を走った。



も、もしや…



咄嗟に質問の仕方を変えてみた。

これでもう一度馬鹿扱いされた方が精神上助かる。

頼むから馬鹿笑いしてくれ!

そんな想いでハチ女に尋ねた。


「今、“昭和”何年だっけ」


ハチ女は私の期待を裏切り「はあ?」という顔をしている。


「あんたどっかで頭打った?さっきから言ってることおかしくない?」


どっちなんだ?

“昭和”という言葉がおかしいのか?

それとも…



「う、うん、ここに入ってくる前に外で頭打ったみたいでさ。今年が何年だったか…」


ハチ女は不思議そうに衝撃的な言葉を言ってのけた。



「46年じゃん」



このハチ女、この女こそ精神疾患があるのだ。

強くそう思った。

もしその言葉の意味するところが真実ならば、精神疾患は俺の方だということになるからだ。


だから俺は、正気を保つのが精いっぱいだった。


しかし… この女のしゃべり方といい、さっきのパンツの見慣れないダサいライン、そして、、、そして、、、


リバイバルCMだと思っていた先程の仮面ライダーの撮影。

あれがまぎれもない当時の本物のものだとしたら…


冷や汗が止まらなかった。


冷静に考えて、現在、この状況は間違いなく昭和のものである可能性が高い。

ここで無理に2004年当時の状況を当てはめようと確証を探すより、昭和40年代と考えた方がはるかに自然なのだ。


何か怪しげなものを見るようにこちらを見ているハチ女。


最後に、もうひとつだけ確かめてみようと思った。

あわてて財布の中から千円札を出した。

「こ、これ、破ってしまったパンツの代金…」


ハチ女はそれを手に取り、俺を睨む。

「あんたふざけてるの?なんで財布から偽札が出てくるのよ」

マジでハチ女がキレ始めた。



全ては明白になった。



この女が気がふれていない限り、今は平成ではないのだ。



あの、パチ屋でのブラックアウトの後、妙な野原に出たが、その瞬間に昭和46年…

つまり1971年に、タイムスリップしてしまったのだ!

俺がパチ屋にいた時代から遡って33年前だ…


そして、その時代の人間と、あろうことかセックスをしてしまった!


俺は元の時代に戻れるのか?


一気に絶望的な気持になり、もはや、ひとことも言葉が出てこなくなった。


とりあえず下半身のコスチュームを履いたハチ女が不思議そうにこちらを見ている。

「アンタ、顔色悪いね… さっき2回もヤったからかな?大丈夫?」


俺はしかし、ハチ女どころではなくなっていた。

真剣にこれからの事を考えた。


そうだ!

33年前といえばハチ女が言ったように俺は3歳だ。

ということは、俺の家族も俺もここに存在するはずなんだ!

とりあえず帰る家はある!


…イヤ、ダメだっ


「俺はあなたの息子です」と、親にどう説明しようがあるというのだ?

信用されるわけがない。

そもそも3歳の俺自身が実在しているではないか。


それに確か、昔見たタイムスリップものの映画で過去に行って、
過去の自分と出会ったら宇宙全体が消滅するとかなんとか…

そんなことを科学者みたいなのが言ってた…

イヤ、しかしアレはただの映画だし…

とは言ってもコレ、どうすればいいんだ…?


途方に暮れてハチ女に不審な目で見られている時に小屋の扉の外で声がした。


「岩森さん、出番です!」

ハチ女を呼びに来た撮影スタッフのようだった。

「はいよ、今出ていくから」

とハチ女は答え、俺に

「じゃ、アタシは行くから。あんたもいつまでもここいるとやばいかもよ。早く帰った方がいいよ。じゃ、バ~イ」

と言い残して軽快に小屋から出て行った。



ば~い?


なんだそれは?


ルパンの峰不二子みたいなセリフだ。


そうか、この時代はああいう口調が流行りだったのか…


…で、イワモリ?

それがあのハチ女の名前らしかった。


「イワモリ」という名前にはなんか覚えがある。


なんだっけ…


ああ、そうだ。

女ではないけど、“イワモリシンゾウ”とかいう芸人がいて、
よくその芸人に似ているって言われたっけ…


…って、そんなことはどうでもいい!


とにかく、この状況をどうすればいいんだ?


一人で悩んだあげく、結局ここにいても何も解決しないのでタイムスリップした地点まで戻ってみることにした。


ロケが進行していた。

俺が落ちてきた地点から少し離れたところでハチ女とショッカー(敵の戦闘員)数人が監督みたいな人と打ち合わせていた。

監督が指差した方向にはさっきのバイクに乗ったライダーが仮面をとって待機していた。

遠目ではっきりとは見えなかったがまず本郷 武役の藤岡 弘のはずだ。


やがてロケが始まった。

ショッカー達と仮面ライダーが先程の監督が説明していた場所で立ちまわっている。

何度か撮り直しをさせられているようだった。


俺は2004年から落ちてきた地点から動くこともできず、ひたすらそのままそこで「体育座り」をしていた。

すると、後ろの方からガサッと物音がする。

びっくりして後ろを振り返ると、さっきのハチ女が来た。


「あっアンタ、まだこんなとこにいたの?」

「あ、ああ。その、ちょっとね。」

「何?アンタ、ファンの人間?」

「い、いや、なんていうか、そう、ファンなんだな。仮面ライダーの。ちっちゃい時から」

「何言ってるのよ。バカ」


まずい。またしても失言だった。

俺にしてみれば「ちっちゃい時」なのだが、今ここで起こっている「本物のジェネレーションギャップ」がハチ女に通じるわけがない。


「さ、早く帰って。ここは危ないから。ロケ中だから、あちこちに爆薬仕掛けてあるんだよ」


「え、そ、そうだね…」


俺はハチ女に腕を引っ張られながらも行き場の無い状況に困っていた。
しかも俺にとって、この場所こそが唯一、2004年への足掛かりと思える場所だったから動くに動けない。

がんとして場所を動かない俺にハチ女は呆れて

「全く。もう知らないよ。撮影中に一般人が紛れ込んで怪我されたんじゃスポンサーがうるさいんだよ」

しゃがみこんでいる俺はハチ女を見上げる格好になっていた。

ピッチリとしたコスチュームを見ているうちに、今の心配とは全く別の「欲望」がムラムラと湧いて出てきた。

ハチ女の手をつかみ、こちらへぐいっと引っ張りこむ。


「あっ」


ハチ女はこちらへ倒れ込む。


「やめてよ!もう撮影始まってるんだから!ちょっと!」

そのままハチ女を抱え込み、再び下半身のコスチュームを脱がせにかかる。


「やだ!やめてったら!まずいから!」


必死に抵抗するが、周りに聞かれないようにハチ女は声を出来るだけひそめている。


俺は現実逃避をしていた。

身に降りかかっているとんでもないこの状況を素で受け止め続けるのはもう耐えられない。

沸き起こる性欲が今の自分の全てだった。


ハチ女のコスチュームを半分脱がせると、その下は何も履いていなかった。

さっきパンツを破ったからだろうか。

それとも撮影でパンツのラインが出るのはまずいからいつもノーパンなのか?

とにかくパンツを脱がせる手間が省けたのをこれ幸いと、ケツを丸出しにさせ、その上からのしかかった。

ジーンズのチャックから素早くチンポを出した。


既に勃起している。


「な、なにを!? まさかまたやる気なの!?」

ハチ女は必死に抵抗する。

先程の情事のあと、ロクにおまんこも拭かずにコスを着たのだろう。

ハチ女のおまんこはぬるぬるのままだった。

完全復活したチンポをあっというまに後背位で挿入する。


「あくっ」


ハチ女は押し殺した声で呻く。

後ろから獣のような態勢でハチ女を貫く。

ハチ女のコスチュームは厚手の上、リハーサルでも結構動いていたのだろう。

汗の臭いが鼻を突く。

腋のあたりからもたまらないスケベな臭いがしてくる。

俺は再び興奮のるつぼへと身を委ねた。


腰の回転が上がる。

ハチ女は苦悶の呻き声を押し殺しながら漏らす。

俺も息が荒くなっている。

たまらない。


ハチ女だけにとろけるような「蜜」壺だ。

次から次へと牝の性蜜が溢れ出てくる。

チンポがぎゅうぎゅうと吸い込まれる。

稀に見る名器というやつだろう。


もう、イきそうだ。


「あっ ま、また出る!」

「イヤっ やめてっ お願いだから外で…!」

「あああっ もう… ダメだ… あっっ!!」

「あン!イヤッ」


3度目の射精はダイナミックに腰を突きまくった。

その動きはまるでマシンガンそのものだ。

ハチ女だけに「ハチの巣」にしてやった。


同時にハチ女も体をのけぞらせ、頂点を迎えたようだった。


「あっ あっ あっ い、イクっ!イクっ~~っ!!!」


最後の一滴までハチ女の蜜壺の奥深くに送り込んだ。

最高の愉悦だった。

その一瞬に全てを忘れ、永遠の快楽を追う。


またしても、ハチ女に膣内射精を決め、その妖艶な背中にぐったりと倒れかかる。


と、その直後に、轟音とともにこちらへ向かってくる影があった。


物凄い勢いでジャンプしたバイクがこちらへ突っ込んできたのだ。


バイクの影を確認した時には既に俺の鼻先までタイヤが近づいていた。


やばい!死…!?


本能レベルでそう感じた刹那、あの、ライダーベルトの脳をつんざく音が鳴り始めた。


ヴォォォォィィ~~ン!ピキィィィーーーーン!!


バイクのタイヤが鼻先数ミリのところで超スローモーションになる。

突然五感が恐ろしいほどに冴えわたるのが感じられる。

視界がライダーベルトのピンク色に染まり始める。

ゆっくりと、ゆっくりとした速度でブラックアウトが始まる。


意識が遠のいていく…




「大丈夫ですか!お客さん、お客さん!」



耳元で誰かが叫んでいる。

意識がぼんやりと戻ってきた。

かすんだ視界も戻り始める。

俺の目の前で、パチ屋の店員と周りのお客が心配そうに俺に声をかけて体を揺さぶっている。


意識を取り戻した俺は、それまで、何か夢を見ていたような感覚だった。



パチ屋の店員によると、俺はパチを打っている途中でどこかにいなくなったらしい。

台の玉受け皿の上には俺の煙草が置いてあり、きっとトイレにでも行ったのだろうと思っていたようだ。

それから5分後にその台の裏のシマ、こちらには客が全くいなかったらしいのだが、そのシマの中ほどのところにうずくまっている俺を通りかかった客が発見し、店員を呼んだということだった。



俺は夢を見ていたのか?


たった5分って…?


そんなはずはない。

今夜のあの出来事は少なくとも1時間くらいは経っているはずだった。

しかし、どうも夢ではなさそうだった。


というのも、俺は他の客に発見された時、ジーンズからチンポを出していたらしいのだ。

店員がとりあえずそれをしまってくれたらしい。

気絶しながらチンポを出すなんて普通できないと思う。

チンポを出したのには出すだけの理由があったのだ。


しかし、単に夢を見ていたのかもしれない。

俺にも確信は無かった。

あれが本当に起こったことなのかどうか。



あの出来事があってから4か月、たまにパチには行くが、同じ事は起こらなかった。

やがてあの出来事は気絶したときに見た夢か何かなのだろうと思い始め、あまりそのことを考えなくなっていった。


普通の日常生活に戻っていた。


そんなある日のことだった。

ちょうどその頃、彼女ができたのだが、その彼女の家に泊まりに行った折のことだった。


二人でテレビを見ていた。

お笑い芸人のなんとかグランプリというのをやっていた。

ふたりで何気なく見ていたが、

例の「イワモリシンゾウ」が出ていた。

ピン芸人だ。

それを見るなり彼女は大爆笑しながら、


「あー!この人この人! サトシ(俺の名)にソックリだよね~! マジで似てるよ!」


またかこのネタか…以前から同じ事を言われ続けていた。

少しヘコんでその芸人を見ながら、ふとある事を思い出し、背中に悪寒が走った。


待てよ!?


イワモリシンゾウ…

イワモリ?


岩森?



いや、しかし、「あれ」が起こった以前から、既にこの芸人も自分も存在しているではないか?

っていうか…「あれ」は夢みたいなもんだったはずだろう!?

し、し、し、しかし… 時間軸を考えてみると。。


ハチ女は「岩森さん」と呼ばれていた… 

ハ、ハチ女に子供はいるのか?

ハ、ハ、ハ、ハチ女に中出しをしたあの生々しい体験が本物だとして…

も も も もしや、、こ、こ、この芸人…

この、自分とソックリだという芸人は…


オ、俺の…!?


そ そんな…


た、確かに自分自身でもヘコむくらいにコイツに似ていると思う…汗


あのハチ女を演じていた「岩森」という女優に子供がいるのかどうかなんて

今の世の中調べようと思えばいくらでも調べられるだろうけど、

俺にはとてもそんな恐ろしい事に触れる勇気は無かった。

あの夜の出来事は、いっそ、夢であって欲しいとすら思う。

そう、そんな映画みたいな事、起こるわけがないのだ。


しかし……


コロコロと笑い転げる彼女を見ながらも焦点は合わず、俺は戦慄していた。


【終り】
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