Vol.21  あの夏の日 ~真夏の杜の竹やぶで~    written by  鐘栄瞭

昨夜のお医者さんごっこで経験した初めての「男子の生理」があまりにも忘れ難く、
そしてあの時のゆかりの白魚のような指もまた脳裏から離れず、私はほとんど一睡もできないままに朝を迎えたのでした。

私たちは階下に降りて、外の井戸場で顔を洗い、台所で父と母、ゆかりの両親に挨拶をして、朝食をとりました。

ゆかりとは何かぎこちなく、昨夜の事をお互いに意識してしまっていたためにほとんど話ができませんでした。

日出子だけがひとり元気にきゃっきゃと屈託もなくおしゃべりを弾ませていました。

まるで何事もなかったかのように。


今思えば、私たちの中で一番大人だったのはあるいは日出子だったのかもしれません。


皆で朝食を食べているときに上がっていたのは、近くその村で行われる箏句(ことく)大明神様の祭りの話題でした。

箏句大明神様というのはその村で昔から祭られている、作物豊穣の神様で、

毎年夏にはその秋の豊作を祈願するための夏祭りが行われるのでした。

私はもうこの家に遊びに来るようになってからはだいたい毎年このお祭りにはこの家のもの達と一緒に参拝していました。


その祭りは「箏句さん祭り」と呼ばれ、村の東の徳利山(とくりやま)ふもとにある箏句神社で行われておりました。

祭りには村中の者が参加し、境内横の広場に舞台を作り、

その村の伝統の「劉鬼払い(りゅうきばらい)」の舞いを皆で西瓜や桃を、大人は酒を飲みながら見るのでした。


劉鬼(りゅうき)というのはその村に古くから伝わる、豊作を阻む鬼の事で、

今で云う自然の天候の悪さや害虫による不作の原因は全てこの「鬼」によるものだと考えられていたのです。

そうした劉鬼が暗躍した年などには決まって不作や病気が村を襲い、長期に渡って村人を苦しめていた折に、

全国を行脚していた箏句法師(ことくほうし)という高僧がこの村を通りかかったそうです。

この村に滞在した箏句法師はやがて劉鬼の存在を知り、自らの命と引き換えに6年の歳月をかけてこれを地の獄へ封じ込めた、

という逸話が残っており、この箏句法師を村で祭るようになったのが始まりだったようです。


その「劉鬼払い」の舞いは大変に面白く、村の若いものたちが10人ほどでまとまり、蛇のように長い張子で作った「劉鬼」をまとい、

稲庄屋の六谷のおじいが能面をつけて毎年「箏句法師」の役を演じ、この「劉鬼」を成敗する、という子供心にも大変心の躍るものでした。


六谷のおじいはもう何十年も「箏句法師」を演じ続けており、おじいよりも上手にこの役を舞うことのできる人間は

村には他に誰もいなかったのでした。

笛と太鼓の中、勇ましく、そして緩急の入り混じったその舞は、ずば抜けた才能と呼べるものでした。


このお祭りの話題が始まると、岩上(ゆかりの家の姓)の者もうちの両親も、すっかり盛り上がってしまい、

朝食が終わってからも延々と六谷のおじいや村の世話役などについての話に花が咲くのでした。

私ももちろん祭りが楽しみでしたが、父親たちの話までは深く入って行けなかったので、そのうち外に遊びに出るのが常でした。


その日も、お祭りの日があと2日と迫っており、箏句神社では舞台の設営が始まっているということでしたので

私とゆかり、日出子は神社に行ってみることにしました。


道すがら、ゆかりの同級生の志野と出会い、一緒に行こうということになりました。

志野はゆかりの2軒と田んぼを挟んだ1軒南に住む、石屋の娘でした。

ゆかりより身長が高く、黒い髪が女らしさを際立てているなかなかの別嬪でした。

私もこちらに来た折、何度かこの村のゆかりの友達と遊んでいたので、志野のことも知っていました。


志野は私を見ると笑顔で

「栄さん、今年も来たかね。」

「はい、志野ちゃんもお元気そうで。お姉さんになられましたね」

「ふふふ。いっつも上手だて、栄さん。箏句さんは一緒に見ようで」


私は実をいうと、この志野に昔から惚れていたところがあり、

ゆかりの事も気にはなっているのでしたが、田舎者ではあるけれど、身長も高く、モダンな舶来の女性を彷彿とさせる

志野は東京の国民学校にいても美人の格だろうと思われる器量でした。


しかし、私の恋心も、昨夜のあの一件で何やら昨年までの淡いものからむくむくと粘液質なものに変わっていたことを

図らずも今の志野への「お姉さんになられましたね」という言葉から感じていました。


私は、この時、この志野にも、私の男の生理を分かち合いたい、とそう思ってしまったのでした。


しかし、ゆかりはそんな私の下心を悟ったように

「栄ちゃん、大人ぶって~。まだまだ国民学校のちゃんばら(小僧っ子)だて~」

とからかいました。


私は志野の手前、自尊心をあからさまに出し

「何言ってんの、ゆかりちゃん、来年は僕も中等だよ」

と対抗しましたが、ゆかりの見下すような一笑に精一杯の虚勢も弾かれてしまいました。


日出子が助け舟を出してくれました。

「なあ~ 志野ちゃん、今年の祭りは鬼払い以外にはなんの演もないかや?」

「うん、うちもよく知らんだき。じっちゃがそのうち唐大さんのいぶき踊りを呼ぶて言うたき」

「唐大さんなて、ずっと見寄らんが。もう生きとらんでないの?」

「わからんて。なんも話聞かんだき」


唐大さんというのは、帰化した中国人で、10年程前には隣の県からこの村の祭りのためによく呼ばれていた人のことでした。

私はこの人に関してはほとんど記憶がないのですが、

当時は劉鬼払いと並んで人気のあった唐の舞いを披露していた人だったようです。


そんな話をしながら、箏句神社に到着すると、境内横の広場には、さっそく人夫たちが舞台を設営していました。

私たちは色めき立ち、少し離れた場所からその様子を眺めていました。


そのうち日出子と志野は、境内の反対方向に、何かの野草を探すといって歩いて行きました。

残された私とゆかりは、相変わらず舞台の様子を見ていました。


やがてゆかりが口を開きました。

「なあ 栄ちゃん、昨夜のアレな」

私はドキっとして

「えっ!? あっ な、何?」

と良く聞こえないふりをしました。


ゆかりはそっと囁くように

「栄ちゃんのおといどさん。小糸出したんはあれ、初めてだか?」

「あっ あれ、あれは…」


私は先程、志野の前で少しからかわれたことがまだ心に残っており、

志野はそれで私を子供だと思って、日出子とどこかへ行ったことが何か腹立たしかったので

まだ虚勢を張っていたい気持ちが強かったので嘘をつきました。


「こっちでは珍しいだろうけど、東京じゃ僕も、同級のみんなもとっくに済ませているよ」

ゆかりは信じられないといった顔で

「嘘だて。そんなこと」

「嘘じゃないさ。僕は1週に1度は精通があるんだよ」


ゆかりの表情は勝ち誇り、「見抜いた」という口元、目元で私を再び見下すように

「ふふふ」

と笑いました。


「な、何?本当だよ」

焦ってゆかりに抗議しようとしますが、ゆかりはうっすらと同情の目とすらとれるような細い目になり、

「わかってないてな、栄ちゃん」

と優しく言います。


私は頭に来て

「何が!ゆかりちゃんは何がわかってるっていうの!?」

と声を大きくしました。


ゆかりは人差し指を唇にあて

「し~~~っ!」

と私を諌めました。


憤る私はゆかりに見つめられ、少し焦りました。

たったふたつ年上だけど、やっぱりこの女には嘘は通用しなかったようでした。


ゆかりは優しく、私の手をとり、日出子たちの姿のないのを確認すると、

それまでいた境内横の広場から、右に折れた竹藪の中に連れて行きました。


ゆかりに手をひかれ、どんどん薄暗い竹藪の中を進んでいきました。

「な、何。どこに行くの」

と問うとゆかりは、

「栄ちゃん、うちはわかるだき。栄ちゃんがゆんべ(昨夜)、初通し(初の射精)だったことくらい」

「な、何を」


ゆかりが全てお見通しだったことへの無力感と、裏腹に昨夜の再現を望む暗い欲望が一気に私を取り囲み、

私は知らず知らずのうちに性器を固くしていました。


ゆかりは私をじっと見つめると、しゃがみこみ、私のズボンを下ろし始めました。

「あっ」

「栄ちゃん、ゆんべのこと、忘れられんなが。また小糸さん、出してあげるき。」

「や、やめ…」

そう抵抗してみましたが、私は歓喜の気持ちいっぱいでゆかりの行為を受け止めていました。

ゆかりが私のブリーフをおろすと、既に屹立した性器が波に乗り上げる軍艦のようにそびえておりました。

私はやはり恥ずかしくなり、自分の意思通りにならぬ体の一部から顔をそむけ、ゆかりを見れませんでした。


ゆかりは私の敏感な性器の先を昨夜のようにやさしく指で弄び、

「ふふ。栄ちゃん。うちだってわかるんよ。栄ちゃんが大人かどうかくらい」

あの昨夜のめくるめく快感がふたたび訪れようとしていました。


ゆかりの白魚のような細い指先で、性器の先端をこねくりまわされると、さっそく透明なヌルヌルの液体が溢れ出てきました。

竹藪の外側からは、舞台を設営する人夫の叫び声が聞こえてきます。

こんなところを大人たちに見つかったら、相当に叱られるに違いない、

そう思うと、何故だか余計に興奮してしまう自分がいました。


性器はゆかりに弄ばれ、いよいよびくびくと痙攣していました。


ゆかりを直視できず、顔をそむけていると、突如、それまでの快感とは異質の、

新しい感覚が襲ってきたのです。


それまで大気中にあったはずの性器が、何か生温かいものでこっぽりと包まれている感覚。

その濡れた温度のあるものの中に包まれながら、大きななめくじのようなものが私の性器にずるんと接触してきました。

かつてない程の異常な快感に私の脳天はひっくり返りそうになりました。

あわててゆかりの方を見ると、私の性器を隠すようにゆかりの頭部が見えています。


そうして、あのなめくじのようなものがぬるり、ぬるりと私の性器にまとわりついています。

ゆかりが、私の性器を口で頬張っていたのです。

その事がわかった瞬間に、昨夜の電気のようなものが腰に奔りました。

またしても、尿道を通じて、マグマのようなものがこみ上げてきました。


「あっ ゆかりちゃん は、はなれて」

焦って言ったその言葉を無視するようにゆかりは私の性器を口の中で弄びます。


あっ あっ


ゆかりは私の性器を頬張りながら


「んぐっ んん…」

と口の中で私からどくどくと放出され続ける欲望を受け続けています。


私はたまらなくなり、ゆかりの口の中にありながら、

腰を突き上げていました。

その度に、ゆかりの喉奥に何度も何度もあの強烈な放出を繰り返していました。


ゆかりは途中で苦しくなったのか、私の性器から口を離し、

脇に私の放出したものを吐き出していました。

ゆかりの濃厚な唾液も混じっていたのか、驚く程の澱んだ液体が出ていました。


私はゆかりが口を離したあとも、自分で指先で皮の先端をこねくりまわし、腰を動かしながら

気の済むまで狂ったように性器をいじくりまわしていました。


ゆかりが傍らでその様子を見ながら

「ごんべさん?(気持ちいい?) そんなにでっこに(一生懸命)むじらんなら(こねくりまわすってことは)

やっぱり小糸さん出しとらんとこだて」


私は放心状態になってゆかりの声を聞いていました。

意味の良くわからない方言がなんとも妙に心地よく、私の精通を歓迎しているように感じていました。


祭りまであとわずかの、真夏の杜の出来事でした。



【続く】
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