Vol.23  あの夏の日 ~祭りの夜~    written by  鐘栄瞭

精通と引き換えにゆかり、日出子とのあの甘美な遊びを断ち切られ、

呆然とする時間を過ごし、いよいよ箏句さんの祭りの日を迎えたのでした。

夕方になり、伯父の賢五の号令で全員揃って一緒に神社へと向かいました。

みんな、それぞれに浴衣を着て。

賢五は父と一緒に先頭を歩き、その後ろにぞろぞろと嫁、子供たちが続きます。

家を出て手前のあぜ道を左に折れ、まっすぐ東へと歩いていくと、

まだ落ち切っていない夕陽を受けた徳利山(とくりやま)の裾野が視界に広がり、

なんともいえぬ美しさでした。

道中、志野の一家と合流し、さらに人数が増えていき、そのうちまた次の家族達と合流し、

いつしか一行は村人たちの集団となっているのでした。


私は昨日以来、ゆかりとは精神的にも距離ができてしまい、ほとんど日出子としか話さなかったのですが

志野一家と合流して、日出子の傍に寄ってくる志野に安堵し、日出子と志野の傍を離れずに歩いて行きました。

ゆかりは道中合流した、やはり同級の山内の寿美江と一緒に歩いており、私たちとは少し離れていたので

私も気兼ねなく志野と話ができると思うと、少しだけ元気が出てきました。


志野は、同級のゆかりよりも2級下の日出子と仲が良く、いつも一緒に行動しているようでした。

私もこの時ばかりはいつにも増して日出子、志野の和の中に隠れるように入っていました。

昨日の傷は、まだ癒えてなかったのです。

志野は淡い紅紫色に紺色の雲霞の入った美しく、可愛らしい浴衣を着て、いつもの屈託のない美しい笑顔で私に話しかけます。

「栄さん、おいでなったなあ(この地方の人達はお祭りやお盆の墓参りにはお互いにこういう挨拶をするのでした)」

「はい、志野ちゃんもおいでなったなあ」

と、だいぶ馴染んだこの地の言葉で返します。

「今年も六谷のおじいの踊り、みんなが楽しみにしとうてや」

「うん、僕ももう4回目かな。」

「一緒に見ようやあ」

「うん」


志野は昨日の私の失態(ゆかりに怒られて泣きべそをかいた)を見ていながら、

何もなかったかのような優しい言葉をかけてくれました。

私は涙が出そうなほど嬉しく、温かい気持ちになれたのです。

日出子もいつものおどけ調子で三人の会話に笑いを差し出してれます。

だんだんと、今夜のお祭りが楽しくなってきていました。


そして、時折私はそっと目線を背中の方にずらし、後ろを歩いているゆかりたちを盗み見します。

ゆかりたちも私たちには全く見向きもせずに、寿美江と一緒にけらけらと笑いながら歩いているのでした。


やがて箏句神社へと到着し、例の舞台の客席へとみんなで向かいました。

客席と言いましても、舞台の周りにむしろが敷いてあり、そこへ各自、固まってどっかと座りこむのです。


伯父の賢五と父は、座りこむとさっそく酒盛りの準備をしています。

村の祭りの世話役達も酒を持ってきては伯父の周りに集まり、仕事前の一杯を始めました。


その傍に私たちも陣をとり、仲の良いもの同士で固まって座り始めました。

やがてどんどん村人たちも集まってきました。

しばらくおしゃべりをしているうちに、祭りの太鼓が高らかに響き始めました。

心が一気に踊り始めました。

太鼓に合わせて笛の音も響き渡ります。


舞台の周りに集まった村の皆は、一斉に手拍子をし、囃したてます。

神社から舞台へと設置された提灯の灯りも次々と点き始め、いよいよ箏句さん祭りの始まりでした。

笛太鼓がだんだんと荒々しい旋律を奏でる頃、まず最初の舞である「劉鬼(りゅうき)」が舞台へ踊り出します。

村の皆がこれを見て一気にどよめきたちます。


劉鬼は、この村に古くから伝わる、豊作を阻む「鬼」で、竜のように長い張子を連ねて、

その張り子のひとつひとつに、村の若い衆が入り、皆で息を合わせて舞を踊るのです。

今年の劉鬼の舞も、日頃の稽古の甲斐あってか、一糸乱れぬそのおどろおどろしくも見事な動きに

村人たちも満足そうな様子で声援を送るのでした。


隣で劉鬼の舞に見入っている志野を横眼で見ますと

紅潮した横顔が提灯の灯りにうっすら浮かび上がり、なんとも艶めかしい様子でした。

私は志野を見やり、またぞろ、自分の「男」の欲望に小さな火種がちろちろと生まれているのに気がつくのでした。

私はどきどきしながらも、わざと志野のすぐ傍に寄りそうように、志野の胸元を見ますと、

浴衣の間から、わずかですが乳の谷間が見てとれます。

うっすらと汗が滲んだその光景がなんともたまらなく、

私はいつしか目の前の舞を忘れ、志野の胸元に釘付けとなり、

自らの性器をどんどん固くしていたのです。

志野はそんな私には全く気がつかずに劉鬼の舞に集中しています。

その向こう隣の日出子もそうですし、みんながそうだったと思います。

志野に体をぴたりとくっつけるようにして、志野の匂いを嗅ぎました。

風呂上がりの良い香りと、うっすらと汗の香りが程良く混じり、その匂いを嗅ぐだけで

私の性器はびくんびくんとあの脈動を開始するのでした。

今日は舶来ブリーフも替えがなく、皆と同じように浴衣の下は何もつけていません。

性器の勃起は、もしこれが昼ひなかなら、誰の目にもはっきりとわかるほどに浴衣の一部を突きあげている有り様でした。

祭りの笛・太鼓の喧騒に紛れ、自分の性器もなんとか周りに悟られずで済みましたが、

一度点いた欲望の炎を制御できるほど、私はまだ慣れてはいませんでした。

かといって、その場で性器をいじりまわす訳にもいかず、

私は落ち着かなくなり、そわそわとしました。


やがて、舞も佳境に入り、暴れまわる劉鬼を退治せんと、いよいよ「箏句法師」の登場です。

箏句神社に伝わる回向猿(えこうざる)の能面をつけた六谷のおじいが舞台の端より

驚くほどの滑らかな足さばきで進み出ると、村人たちは一斉に声と拍手の雨を降らせ、

いやがおうにも祭りは盛り上がっていきます。

柳のようにしなやかで、それでいて振り下ろす五尺杖の力強さとその勢いで響き渡る鈴の音が

舞台に歓喜を与え、皆が陶酔するほどの舞を披露していきます。

もう志野などは目が虚ろとなり、焦点すら合っていないようでした。


『女は祭りの夜には陥としやすい』


賢五伯父の父の権吉がよく酔った勢いにまかせては騒いでいましたが、

今ならその意味がはっきりとわかるような気がしました。

夜のこの喧騒、妖しげな提灯の色、子宮にまで響き渡る太鼓の音、それらの要素が見事合いまったとき、

女は男を受け入れる体に変化していくのでしょう。

事実、この箏句さんの祭りの夜の後には、村の若い男女が婚約することが大変多いのでした。

おそらくはこの祭りの雰囲気で盛り上がり、私のように体に火がついた若い男女が

神社の杜の奥で、人知れずお互いの体を貪り合うのでしょう。

ちょうど一昨日、ゆかりに誘われ、竹やぶの奥で欲望を果たしたように…


その事を思い出すと私はなおいっそう、自分の性を抑えきれなくなっていました。

祭りもたけなわ、箏句法師扮する六谷のおじいが劉鬼を退治し、

喜びの舞に移り、大団円となり、観客の声援と喝采を存分に浴びたあと、

思い切って隣の志野にそっと声をかけてみました。

「志野ちゃん、ちょっとその辺りを一緒に歩かない…」

志野は相変わらずとろんとなり、放心状態で、私の声が聞こえているのかどうかもわからないほどでした。

その隣の日出子もまた同じく、身動きひとつとることが出来ないようでした。

かろうじて性欲の急激な上昇により、別の意味で「自分の理性」を保った私でしたが、

志野たち女性はこの舞の後は決まってこのように放心状態に近いかたちになるのでした。

それほどにまで、六谷のおじいの舞、この祭りの「音」「光」は凄まじいものだったのでしょう。

もとより大人たちは酒も入っていますから理性などはとっくにありませんが。


全く身動き一つできない様子の志野の左腕をつかみ、なんとか立たせるようにしてそっと客席から連れ出しました。

志野は、なされるがままで、私の肩に寄りかかるように力も入っていません。

酒にでも酔ったように頬は紅潮し、口も中びらきのまま遠い視線であさってを見ています。


耳元で

「志野ちゃん、志野ちゃん」

と強めに囁いても

「はァ… うん…」

といった生返事のようなものしか帰ってきません。

そんな抜けがらのように虚ろな目線をした志野を間近で見て、

私はもうとんでもなく興奮していました。

志野を連れて、できるだけ人気のない藪のあたりに連れて行きます。

もう私は汗まみれとなり、浴衣もはだけ、勃起した性器が荒れ狂うように右へ左へと揺れています。

片腕を志野の腰にまわし、その尻の形を手で何度も触るに連れ、我慢が出来なくなってきました。

適当な藪の陰に朦朧となった志野を座らせ、気が狂ったように志野に抱きつきました。


志野の浴衣の上半身を脱がせると、汗でびっちょりと濡れた肌に、思いもよらぬ豊満な胸がさらされました。

私も慌てて自分の浴衣を脱ぎ棄て、私は真っ裸になり、そのまま志野に抱きつき、志野の口を吸いました。

志野と私の汗ばんだ肌同士がべったりと重なり、志野の口を吸い続け、私はもう興奮の絶頂にいました。

志野も、意識ははっきりとはしていないようでしたが、ただならぬ興奮に包まれて、

本能的に感じ始めているのがはっきりとわかりました。


志野に抱きつきながら、片手で志野の帯をもぎとり、浴衣を全部取りはらうと、私の下半身が志野の股の部分に触れました。

私の性器がふさふさとしたものに触れました。

志野の陰毛でした。


そのまま下半身を強く押し付けると、自分の鬼のように反り返った性器はそのまま志野の陰毛の下をすり抜け、

ぬるりとした熱い肉のようなものに当たったような感触でした。

その瞬間に堪えていたものが一気に駆け上ってきました。

私は無我夢中で志野を強く抱きしめ


「ああああっ 志野ちゃん 志野ちゃん!」


と叫びながら大量の欲望を吐き出したのでした。

志野もいつしか私の首に両の手をまわし、下半身をぐいぐいと押しつけ、ひねってきます。

私は一度出したのみでは満足できず、

全く衰えない鉄の塊を片手に持ち、志野の肉ひだにあてがいました。

もう、こうするほかなかったのです。

志野の股の間の肉ひだは驚くほどに濡れていました。

さっき濡れたものではありません。

きっと先程の舞を見ながら、そしてあの腹の下を殴り打つような響きの太鼓を聞きながら

ぐっしょりと濡れていたのでしょう。

私は自分の先端を志野の肉芽にあてがうと、一気に腰を入れました。


ぬりゅっ


という湿った音とともに


「んぐぁン!」


という艶めかしい声を発し、志野はのけぞりかえりました。


志野の熱くとろけそうな肉に強く拒まれながら、私の固い性器の先端はなお奥へ進み、

肉茎を覆っていた包皮がずりゅっと剥けながら入っていくのが分かりました。

その瞬間にも志野は


「ンあああぁぁっ」


と歓喜の声をあげ、もはや大人の女となっていました。


志野も自ら腰を突き動かし、私もそれに合わせて志野に腰を送り込み続けました。

先程、精を出したばかりだというのに、

初めての女の熱く、とろけそうな秘肉の温度、感触の中ではひとたまりもありませんでした。

あっという間に「マグマ」が尿道をのし上がってきました。


「あっ あっ アッ し、志野っ あああっ ぐふっ」


志野と繋がりながらもより一層強く抱きしめ、志野の子宮の奥深くまで性器を捻じ込ませながら

先程の射精感を数十倍も上回るほどの快感で、その夜の欲望全てを吐き出したのでした。


それと同時に志野も絶頂を迎えたらしく


「ウァァアァァっ!!!」


と尋常でないほどの力で私の背中を抱きしめ、

ぶるぶるぶるっ、

と震えて、がくっと墜ちたのでした。


私も志野の奥深い処で、何度も何度も立て続けに精を送り続けたように思いました。

その間中、性器はビクビク、ビクビクと脈動を繰り返し、最後の一滴まで吐き出した後は、

志野の汗だらけの裸体にもたれかかり、繋がったそのままでぐったりとたおれました。


獣のような交わりを終えて、志野の胸に顔をうずめてうとうととしていると

志野の手がゆっくりと私の頭をなでる仕草をし始めました。

「栄さん… 良かったが… わたし、初めてだったとや」

志野は正気に戻っていました。

私は何か恥ずかしくなり

「志野ちゃん、ぼ、僕も。すごく気持ちよくって…」

「小糸さん、私にいっぱいくれたとな… 女になったがも…」

志野を見ると涙を流していました。


月の雫を受けたように流れるその煌びやかな瞳からこぼれ落ちる涙、

その涙が伝い落ちる絹のような肌は、大人の女になった喜びを映し出しているようでした。


あまりにも儚く、美しいその光景を私は生涯忘れることができません。


箏句神社の夏祭りの夜、

ゆかり達とのあの甘美な遊びを失った変わりに私は、新たなる大人の性を授かったのでした。

その年以降私は、中等学校に上がり、医師の勉強を始めた関係で、

この地方にも遊びに行くこともなくなり、志野にもゆかり達従姉にも会わないままに成人をしました。


やがて私は東京で妻を取り、ふたりの子供を授かり、家庭を築きました。

たまにゆかり達の家にも行くことはありますが、

彼女たちもそれぞれ嫁に行き、そして志野にも会う事はありませんでした。

志野も県外に嫁に行った、という話を風の噂で聞きました。



あの夏の箏句神社の祭り…


狂おしくも懐かしく、そしてほろ苦い経験をしたあの夜。

私たちが子供から大人へと成長した端境(はざかい)期こそがあそこにありました。

数十年以上経った今なお、私のまぶたの裏には、はっきりとあの夏の体験が焼き付けられているのです。



【終り】
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