Vol.63  奇跡の混欲温泉#1~RZ250の恩返し~    written by  永遠の詩

俺は45歳のバイカーだ。

月に一度は国内を旅する。

俺の愛機はヤマハRZ250初期型。

白のボディに青の「流星ライン」が入っている。


20年程前に隣町のバイク屋の裏のスクラップ置き場で事故って大破した4L3のエンジン周りを発見し、

タダで譲ってもらい、それを元に2年かけてコツコツと再生作業をした。


俺が中学生の頃に衝撃のデビューを飾ったRZ250は、瞬く間にその後の2ストロークブームの牽引役となっていく名機だった。

当時、TZというレーサー仕様のバイクがその性能を極限まで引き継いで市販車輌としてリリースされるという
話題もあまりに衝撃的であった。

その流れるようなボディーライン、2ストロークならではの鼓動は、中学生ならずとも、
当時のバイク好きの話題の中心だった。

あの頃、とてもRZが欲しかったが、結局手に入れることが出来ないままに大人になってしまったが、
ある時、ふとしたことからバイク屋の裏で見つけてしまったのだった。

その時、RZのエンジンは俺に「もっと走りたい。誰か、僕を生き返らせて」
と訴えかけているように思えて仕方なかった。

そうして手に入れたエンジン部からスタートし、
あちこちで苦労しながらパーツを探す日々が始まった。

毎週、週末になると一日中再生作業をしていた。

元々、バイクは好きだったがこれまでほとんど乗ったことがなかったため、
エンジン周りのことなんかまるで解らなかった。

友人の兄で、この手の事に詳しい人がいたので、
紹介してもらって、ちょこちょこ家に来てもらっては再生作業の手伝い、というか
俺が彼の手伝いをしていた。

こうして約2年の歳月を経て、ほとんど彼の技術で組み上がったのだった。

中学生の頃から死ぬほど憧れていたバイク、RZ。

今では旧車ブームとかで、この時代に発売されていたバイクは
びっくりするほどの値段がついている。

それを、人の手を借りたにしろ、自前で組み上げた喜びはひとしおだった。

それ以降、メンテナンスも含めて、彼にバイクの事を教わりながら
俺の遅すぎたバイク人生が始まったのだった。

キック式なのでエンジンのかかりは良いとはいえず、
機嫌が悪い時には泣きたくなるほど言う事を聞かない。

でも、そういった事を含めて、このRZがとても愛おしい。


大好きな流星ラインのRZでどこへでも行く。

今年のゴールデンウイークは、4日かけて北九州へ旅行してきた。

実はこれがまた、凄い体験だった。

その時の事を話そうと思う。


俺の住んでいる所は鳥取県。

山陰道と平行して走る国道で岡山まで出て、

そこから山陽道に沿って走る国道で山口の柳井市まで走った。

あくまで高速は使わない。

のんびりと、そして時たまスピード違反をしながら、

常に表情を変える一般道を楽しみながらのツーリングだ。

途中、山間部に入り、敢えて遠回りをするのもツーリングの楽しみだ。

一本調子の高速道路は退屈だし、正直言うと、周りの速度が常に上がり続けることもあって、
生身の体が剥きだしのバイクではこれは結構怖い。お金もかかるし。

勢いを失った中年のささやかな趣味なのだ。

とにかく、ゆっくり、マイペースでRZと旅を楽しみたいのだ。


柳井市からはフェリーでのんびりと瀬戸内海を眺めながら九州の別府港へ。

別府からは途中飯屋へ寄ったり観光をしながら国道を西に向かってたらたら走ること
約2時間ほどかけて、湯布院周辺に到着。

温泉街のあるエリアを回っているときに、途中立ち寄ったローソンでRZの脇で煙草を吸っていると
寅壱で若づくりをしたような労務者風のおっちゃんから声をかけられた。

俺のRZに反応してきたのだ。

歳も同世代っぽかったし、やはりこのバイクは俺達みたいな年齢の人には
捨て置けない存在なのだろう。

向こうからフレンドリーに話しかけてきてくれた。

おっちゃんも昔、バイクに乗ってたらしかった。

若い頃は暴走族だったと言う。

CBX400FにBEETのサイドカバー、ヨシムラの集合管という80年代定番の族使用だったらしい。

CBXも大好きだった俺はすっかりおっちゃんと意気投合して
ローソンの前で長話に花を咲かせた。

バイクの話をしているおっちゃんの目はとても生き生きと輝いていた。

始めて会う者同士なのに、共通の趣味ですぐに認め合える。

素晴らしいことだった。

本当に感動した。

RZを再生して本当に良かった、と心から思った。

そしてまた、RZに乗っている自分自身が誇らしかった。


そのおっちゃんから、近隣に穴場の混浴風呂があるという情報をゲットした。

「まあ今の時期はどっこも混んどるけな、何処行っても一緒やけどな。」

と、広島弁っぽい言葉で行き先を教えてくれた。

礼を言い、教えてもらった混浴温泉へとひた走った。


結構な山の中で、本当にこんなところに混浴温泉なんかあるのだろうか?

もしかしたら担がれたのかな…?

と不安と疑心が湧いてくるも、ほどなく該当温泉の案内看板を発見し、
あのおっちゃんの言ってたことがウソでないことがわかった。

やはりバイクを愛する者に悪い人間はいないのだ。


そこは「いくの温泉」という名前の温泉宿であった。

そこに泊るかどうかは別として、とにかく、「混浴温泉」に入ろうと思っていた。

GWといえど、ここは九州だし、宿なんか探せば山ほどあるに決まっている。

とりあえず「昼の部」は混浴を楽しむのだ。


そこは混浴だが、さらに露天風呂でもあった。

山中の県道沿いに開けた土地があり、そこ一帯が温泉地となっていた。


外からは、その露天風呂は岩と竹壁で見えないようにしてあるが、

温泉部から見た南東の方面はすぐに崖になっていて、その数キロ向こうに花牟礼山が見える。

露天風呂から見るその風景はまさに絶景だった。


しかし、温泉敷地内に入ってみると、不思議な事に客はひとりもいない。

この時期、いくら山の中だからといって、いなさすぎる。

確かにここ数年、不況の影響から旅行客が激減しいるという話は別府界隈でも耳にはしたが
そういうのは俺の住んでるような地元の中途半端な温泉街だけのことなのかと思っていた。


しかしまあ、混んでる温泉よりはるかに都合が良い。

この素晴らしい景色と最高の湯が貸切り独り占めではないか。

旅の疲れも一気に吹っ飛ぶような爽快感に、俺はひとり露天温泉で大の字のようになって満喫した。

目を閉じるとうっすら硫黄の香りに、山の新緑の香り。

天国とはまさにこのことだ。


そして、この「天国」はやがて「極楽」になっていくことになる。


20分近くも湯につかっていただろうか。

そろそろふやけてきたので上がろうとしていると背後に人の気配がした。

何気なく振り返ってみると、女がバスタオルを体に巻いてすぐ近くに来ていた。

女と目が合った。

なんだかとても気まずい。


お互いにそんな感じで挨拶すらできなかった。

相方まさか、客がいるなど思ってもいなかったのだ。


女も、結構焦っている感じだ。

見たところそんなに若くはない。

40代いってるかどうか。

俺よりは少し年下か?

しかし、なんともエロい体つきではある。

顔立ちは、どことなく石田ゆり子に似ている。

頭に巻いた黄色のタオルも、余計にエッチな印象だ。

っていうかこの人、家族は?

どう見てもどこかの品の良い奥様だろ?


女がお辞儀をした。

俺も

「こ、こんにちわ」

と焦って風呂の中からお辞儀をした。

「あ、も、もう上がりますから」

と、意味も無く気を遣ってしまい逃げるように風呂から上がろうとすると

「えっ、あ、あの、いえ、すみません、どうぞ、ごゆっくりしてください」

と女も気を遣って、少し風呂に入るのを躊躇いはじめた。


「あ、ど、どうぞ。その。俺、あっちに離れますから」

と、出来るだけご婦人のいる位置から離れようと移動するように身を上げると

「あっ そんな! すみません、いいですよ。私が。。」


といって温泉の向こう側に廻っていく。

俺からはほぼ対面の一番離れた位置からご婦人は入浴を開始した。


俺も向こうも、妙に意識してしまってなんだかバツが悪い。

とにかく、このまま入っていてもなんだし、一度上がろう。

そうだ、体洗わなきゃ。

まだちゃんと洗ってなかった。


温泉から上がって8m離れたところに、鏡は無いが、

腰かけ椅子が置いてあり、温泉から引いたお湯が出る蛇口も設置されている
「洗い場」と思われる場所があったので、そこに腰かけて置いてあった石鹸で体を洗いはじめる。

すると、驚いたことに、後ろから声がかかった。

「あの…」

「えっ!?」


ご婦人が、バスタオルを巻いたままで俺の後ろに立っている。

焦っている俺を見て彼女はちょっと恥ずかしそうに


「よ、良かったら、お背中流しましょうか…?」


びっくりした。

この温泉のそういうサービスの人なのか?


混乱して返事もできない俺に彼女は


「あっ ごめんなさい、失礼ですよね。」


と言って後ろずさったが俺は自分を取り戻し、

「い、いやいや、ほ 本当にお願いしていいんですか?」

と声が裏返ってしまう。


「え、ええ。よろしければ…」


温泉に長いこと浸かっていたせいで白昼夢でも見ているのではないだろうか?

こんなことが現実に起きるのか?

AVの温泉動画モノよりはるかにミラクルだ。

それとも、やらせの盗撮モノなのかも。

どちらにしても、これは凄い機会だ。

一生に一度あるかどうか。


ご婦人は丁寧に背中を流してくれる。

時折すべすべした手の平が肩甲骨あたりを軽くこすってくれている。

そして何か、女のいい匂いがしてくる。


その時、瞬間的に俺は悟った。

RZ、この奇跡のシチュエーションはきっとお前の恩返しなんだな。


ありがとう。


そんな思いをかすめながらも、俺の心臓は一気に高鳴り始めた。

タオルで隠しているチンポがぐんぐんと勃起してきているのを抑えることができなかった。



【続く】
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