
1967年公開のアメリカ映画『夜の大捜査線』(原題:In the Heat of the Night)は、人種差別が根強く残るアメリカ南部を舞台に、黒人エリート刑事と白人の地元警察署長が反発し合いながらも事件解決に挑む姿を描いた名作サスペンスです。第40回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞など5部門を受賞しました。
以下にあらすじをまとめてみました。
あらすじ
物語の舞台は、猛暑が続くアメリカ南部ミシシッピ州の田舎町スパータ。ある夜、町に工場を建設する予定だった北部の裕福な白人実業家が何者かに殺害される事件が発生します。
地元警察のギレスピー署長(ロッド・スタイガー)は、深夜の駅で列車を待っていた身なりの良い黒人男性を不審者として連行させます。ギレスピーは彼を犯人と決めつけて高圧的に尋問しますが、所持していた身分証から、彼がペンシルベニア州フィラデルフィア市警の敏腕殺人課刑事、バージル・ティッブス(シドニー・ポワティエ)であることが判明します。母に会うため、たまたまこの町で列車を乗り継ごうとしていただけでした。
誤認逮捕が発覚し、ギレスピーは厄介払いするようにティッブスを町から追い出そうとします。しかし、ティッブスの直属の上司からの指示や、未亡人となった被害者の妻の強い要望(ティッブスの的確な検死能力を見て彼に捜査を依頼)もあり、ティッブスはこの町に残り、一時的に捜査に協力することになります。
都会的で洗練された黒人刑事ティッブスと、粗野で偏見に満ちた南部の白人署長ギレスピー。二人は激しく反発し合いますが、捜査を進めるうちに、ギレスピーはティッブスの卓越した推理力とプロ意識を目の当たりにし、次第に彼を警察官として認めざるを得なくなっていきます。
当時の南部には激しい黒人差別が蔓延しており、ティッブスは捜査の過程で地元の白人住民から数々の嫌がらせや命の危険に晒されます(※地元の有力者に平手打ちをされ、ティッブスが即座に打ち返すという、当時の映画としては非常に衝撃的なシーンも描かれます)。
幾度も捜査が行き詰まり、無実の人間が犯人に仕立て上げられそうになる中、ティッブスは冷静に証拠を集め、ついに真犯人にたどり着きます。犯人は、地元のダイナーで働く白人青年でした。動機は人種問題や政治的なものではなく、妊娠した恋人のための堕胎費用を欲したゆえの、突発的な強盗殺人だったのです。
事件が無事に解決し、ティッブスがフィラデルフィアへ帰る日が来ます。ギレスピー署長は自らティッブスのカバンを持ち、駅まで彼を見送ります。出会った当初の敵意や偏見は消え去り、二人の間には同じ警察官としての深い敬意と、言葉を超えた絆が芽生えていました。
列車に乗り込むティッブスに、ギレスピーが「バージル、元気でな(Virgil, you take care, y’hear?)」と穏やかに声をかけるシーンで物語は幕を閉じます。
感想
映画は1967年ということで私が2歳の時の作品だ。
当時の社会情勢をリアルタイムに感じることはできないがアメリカでの人種差別は想像を絶するものだったと推測される
そういう時代背景があるなかでティッブス(シドニー・ポワチエ)が聞き込みに行った先の地元有力者からビンタされ、即座に張りかえしたところは見ていて「やっちまったな」と思った。
ただじゃ済まないなと。やはり白人グループに襲撃を受けた
この場面は私が衝撃を受けただけでなく米国での公民権運動にも大きな影響を与えた
それから現代まで60年近く。時代は表面的には変わった。
肌の色でなく能力・努力でバラク・オバマ第44代アメリカ合衆国大統領のようにアフリカ系(黒人)大統領も生まれた。
ただ世の中から差別(人種、性別、職業、年齢、障害、出身など)が完全になくなることはない。
これは差別している側が自分も差別されていることを理解していないからではないかと思う。
自分自身も差別されていることが理解できれば他人に対する差別はなくなる
映画の中でティッブス(シドニー・ポワチエ)はペンシルベニア州フィラデルフィア市警の刑事として描かれているが給料を聞かれて週休162ドルと答えていた。当時のかなりの高給取り。
現在で言えばひと月4週として162*4=648ドル。1ドル160円とすると648*160=103680円となる。
ちなみに現在のアメリカの高給取りは、
米労働省統計局(BLS)などの最新データに基づく収入の階層は以下の通りです。
個人の労働者の中で上位10%に入る層です。一般的に「高給取り」と認識されるのはこの水準からと言えます。
一般的な収入(中央値)
週給:1,235ドル(年収換算:約6万4,000ドル)
2026年第1四半期におけるフルタイム労働者の中央値です。まずはここがアメリカの標準的な給与水準となります。
トップ10%の個人(高給取りの目安)
週給:約3,223ドル(年収換算:約16万7,000ドル)
公民権運動とは
主に1950年代半ばから1960年代にかけてアメリカ合衆国で起こった、アフリカ系アメリカ人(黒人)に対する法的な人種差別や隔離制度の撤廃を求め、基本的人権と平等を勝ち取るための大衆運動
南北戦争で奴隷制が廃止された後も、アメリカ南部では「ジム・クロウ法」と呼ばれる州法によって、学校、バス、レストラン、トイレ、水飲み場に至るまで、あらゆる公共施設で白人と黒人を分離する「合法的な差別」が続いていました。この理不尽な体制に対し、黒人市民たちが立ち上がったのが公民権運動です。
運動の最大の武器は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)らが主導した「非暴力不服従」でした。デモ行進、ボイコット(不買運動)、シット・イン(白人専用席に座り続ける抗議)などの平和的な手段を用い、不当な逮捕や暴力的な弾圧を受けながらも、社会や政治に向けて粘り強く訴えかけ続けました。
色々調べてみた:名セリフ「They call me MR. TIBBS!」の背景と意味
“They call me MISTER Tibbs!”(字幕等では「ティッブスさんと呼んでもらおう!」「(フィラデルフィアでは)ティッブスさんと呼ばれている!」)は、アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ「映画の名セリフベスト100」で第16位にランクインするほど有名なセリフです。
シーンの状況
署長室での尋問シーンでこのセリフは登場します。 ギレスピー署長は、黒人であるティッブスが警察官として自分より高い給料をもらっていることに苛立ちと嫉妬を覚え、彼をからかうように尋問します。
ギレスピー:「バージル(Virgil)とは変な名前だな。お前のところのフィラデルフィアじゃあ、周りの連中はお前のことをなんて呼んでるんだ?(”boy” のような侮蔑的な愛称で呼ばれているんだろう、というニュアンス)」
ティッブス: (怒りを込めて、しかし毅然とした態度で) “They call me MISTER Tibbs!” (「ティッブスさん」と呼ばれている!)
セリフに込められた意味
当時の南部では、白人が黒人を呼ぶ際、相手が大人であっても見下して “boy”(坊うず)と呼んだり、ファーストネームで馴れ馴れしく呼ぶのが人種差別の典型的な態度でした。敬称である “Mr.” を黒人に対して使うことはありませんでした。
ギレスピーの「どうせ見下された呼ばれ方をしてるんだろう」という悪意ある問いかけに対し、ティッブスは 「私は一人前のプロフェッショナルであり、尊厳ある人間だ。敬称をつけて呼ばれるのが当然だ」 という強烈な自負と誇りを突き返したのです。
この一言は、単なるキャラクターの反発を超え、不当な扱いを受けてきたすべてのアフリカ系アメリカ人の「人間としての尊厳を認めろ」という心の叫びを代弁するものとして、当時の観客の心を激しく揺さぶりました。あまりにも強烈な印象を残したため、3年後に作られた続編の映画のタイトルは、そのまま『They Call Me MISTER Tibbs!(邦題:続・夜の大捜査線)』と名付けられた。

